ご相談者の声
どうか声を出す勇気を持って下さい。~松元美幸様・紀子様(鹿児島県)~
息子さんが過労によって倒れられ、常時介護が必要になってしまわれたお父様・お母様からのメッセージです。
労災認定後、波多野弁護士ほか数名の弁護士が依頼を受けて取り組み、従来の年金額の大幅増(給付基礎日額についての審査請求)を勝ち取ったほか、民事賠償では介護費用を含む賠償が認められています。
当相談室のニュースでも取り上げましたが、民事賠償の第1審判決は注目の事例として広く報道されました。
お手紙の内容
労災認定後に会社への損害賠償等について依頼しましたが、毎月支給される労災年金に対し不服申し立てをして頂き、サービス残業代を含み計算仕直し倍額になりました。
労災認定がなされ、そしてその後の金額についての不服申立後にサービス残業代を反映した支給額になったことによって、息子がしてきたことが認められたという安堵感がありました。
私たち夫婦は、24時間365日絶えることなく続く介護は想像を絶する大変なものです。しかし、労災や損害賠償が認められていなかったら、その介護を続けるのはより大変で困難なものであったことは明らかです。息子の介護をしていますが、労災認定や損害賠償が認められたからといって、介護が無くなるわけではないですが、生活費や介護費用が足りなくなるという経済的な心配が無く、介護に専念できるだけでもありがたいです。
労災と言われていますが、加害者がいて私達は被害者なのです。どうか声を出す勇気をもって下さい。
労災申請に踏み切るかどうかについて悩んでおられる方々に対しては、自分達の気持ち・生活を第一に考えて欲しいと切に願います。世間体を考えて、労災申請や損害賠償を断念しても、私達の苦しみを世間は分かってくれませんし、世間が私達を具体的に助けてもくれません。
ぜひ、世間体など気にせず諦めずに倒れた大切な方のため、ご自身のために労災申請等にチャレンジしてほしいと思います。
最初に弁護士の方にお会いした時に「元気な時会社の犠牲になり、病に倒れて迄犠牲にできない」と言われた言葉が支えになりました。
裁判をしてでも傷つけられた息子を守れたという満足感があります。
少なくとも私達の経験からすると、弁護士費用も世間で言われている程大変な額ではありません。
一番大切なのは労災について専門的知識をもつ弁護士の方に出会える事だと思います。そういう意味で私達は本当に幸福でした。
私達のように地方に住んでいると、労災の専門的知識を持っている弁護士を見つけるのが難しいですし、経済的に困っている方々、労災のことがよく分からない方々が多いと思いますが、そういう時にはそのようなことを正直に述べて専門の弁護士に相談すれば、きっと配慮してくれると思います。
私達は鹿児島在住で依頼した弁護団は大阪の弁護士ばかりでしたが、遠距離である不利益は全く感じませんでした。
波多野弁護士のコメント
鹿児島のレストランチェーンのいわゆる名ばかり店長(管理職)が過重業務(超長時間労働などの)によって心疾患(存命・労働能力喪失・24時間介護要)について労災認定後から受任し、労災の給付基礎日額を争いながら(支給額決定に際して残業代を算入していない点について)、民事賠償請求をなした件です。
平成22年2月16日鹿児島地裁判決(確定・労働判例1004号112頁、判例時報2078号89頁)であります。
被災者(原告)の松元洋人さんは文字通り働きづめで私が10年あまりのキャリアの中でも最も過重な業務に従事していた被災者の方の一人であること間違いなく、労災認定がなされたのは当然でした。
ご両親が述べられているように、労災認定はされましたが、150時間を超える未払残業代については全く考慮されていなかったので、弁護団は支給額を争う手続きを行い、これが不服申立手続き(審査請求)で認められたのも大きかったと思います。
ご両親は片時も目を離せない介護を続けながら裁判も戦い抜きました。
ご両親は弁護団の方針を100パーセント信頼してくれ、弁護団の裁判上のお願い(主張立証のための準備)も、大変な介護をなさりながら、きちんとしてくれたばかりか少しでも役立つと思う情報なども逐一教えてくれました。本当に頭が下がる思いでした。
ご両親は世間が何というと、洋人さんのために、介護を自宅でやりきるためにも当然受けるべき補償は求めるという強い決意・確信がありました。これは全く正しいことです。
しかし、巷では残念なことに労災をよく知らない心ない人が無責任な意見をまき散らし(そのような方は決して苦況にいる倒れた方、遺族の方々に対して具体的な援助をすることはまずありません)、それに影響され労災を断念する例が余りに多いように思います。
また、弁護団は大阪、ご両親、洋人さんは鹿児島で裁判も鹿児島で行われましたが、地理的なハンデはほとんどありませんでした。(弁護団は、松丸正弁護士、片山文雄弁護士、波多野進弁護士)