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セクハラ:労災認定の基準見直しへ 事例も示す…厚労省
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20110624k0000m040021000c.html
厚生労働省は23日、セクシュアルハラスメント(セクハラ)による精神疾患を労災認定に結びつけやすくするよう、認定基準を見直す方針を決めた。同省は職場での「心理的負荷」について、セクハラに関してはストレス強度(1~3の3段階)を一律「2」(中程度)と評価しており、特別な事情がない限り労災と認めていない。このため年内にも基準を見直し、継続的な身体接触など悪質事例は最も強い「3」とするよう改める。同日、厚労省の有識者検討会が見直し案をまとめた。
精神疾患の労災認定は、仕事上のストレスの強さを評価したうえで個々の事情も勘案して判断している。ストレス強度は、退職を強要された(3)▽左遷された(2)▽経営に影響する重大ミスを犯した(3)--など。「3」なら確実に労災認定されるわけではないが、「3」でないと認定されにくい。
現在、セクハラはひとくくりに「2」と評価されている。特別の事情があれば労働基準監督署の判断で「3」に修正できるが、判断基準は「セクハラの内容、程度」とあるだけで修正例は少ない。
このため有識者検討会は、セクハラの中でも、強姦(ごうかん)や本人の意思を抑圧してのわいせつ行為▽胸など身体への接触が継続した▽接触は単発だが、会社に相談しても対応、改善されない▽言葉によるセクハラが人格を否定するような内容を含み、かつ継続した--などの事例を挙げ、該当すれば「3」と判定すべきだとした。
厚労省によると、10年度に各都道府県の労働局に寄せられた2万3000件超の相談の過半数がセクハラに関するもので、11年連続最多。一方、09年度の労災申請のうちセクハラがあったとするものは16件で、実際に労災認定されたのは4件。05年度からの5年間でも、認定は21件にとどまる。【山崎友記子】
◆セクハラに関し、ストレス強度を「3」とする例◆
▽強姦や本人の意思を抑圧してのわいせつ行為
▽胸や腰などへの身体接触を含むセクハラが継続して行われた
▽身体接触を含むセクハラで、継続していないが会社に相談しても適切な対応がなく、
改善されなかった。または会社へ相談後、職場の人間関係が悪化した
▽性的な発言のみだが、人格を否定するような内容を含み、かつ継続してなされた
▽性的な発言が継続してなされ、かつ会社がセクハラを把握しても対応がなく、改善されなかった
基礎疾病が重くても労災と認定
大阪高裁平成20年12月18日判決(判例タイムズ1334号91頁・町役場職員の過労死についての公務災害事件・上告されましたが最高裁が棄却し、同判決が確定)の事件について。
(波多野弁護士の一言コメント)
この事案は、私が控訴審から関与しました。
少し専門的になりますが、労災の行政訴訟においては、最高裁第2小法廷平成18年3月3日判決(地公災鹿児島県支部長事件・判例タイムズ1207号137頁、判例時報1928号149頁、労働判例919号5頁・バレーボールの際に発症して被災者の方が亡くなられたので、バレーボール事件とよく言われております。)の事案の判断基準が蓄積疲労型の過労死事件にも最高裁法理が適用することができるかという論点があり、国側は蓄積疲労型には適用できないとの主張がよくなされます。このバレーボール事件の判断枠組みは、
- 被災者の従事した業務が、同人の基礎疾病を自然経過を超えて増悪させる要因となり得る負荷(過重負荷)のある業務であったと認められること。
- 被災者の基礎疾患が確たる発症の危険因子がなくても、その自然経過により脳・心臓疾患を発症させる直前まで増悪していなかったと認められること。
- 被災者には他に確たる発症増悪因子はないこと。
というもので、大胆に要約すると過重負荷等のはっきりした業務上の要因があれば、基礎疾病が重くても、それが発症直前までに増悪していない限り、基礎疾病を理由に業務外とはせずに、労災とする(業務起因性を肯定する)というものです。
高等裁判所の裁判例のほとんどは蓄積疲労型でもバレーボール事件の最高裁判例と同じ判断枠組みで判断しておりますが、大阪高裁平成20年12月18日判決は、蓄積疲労型で、上告などされた結果、最高裁判所が上告を棄却しておりますので、最高裁判所は蓄積疲労型の労災事件でもバレーボール事件と同じ判断枠組みで判断することを肯定していると考えられ、この問題に決着をつけた事件と考えられます。
労災申請を検討されている相談者の方々におかれましては、過重労働等の業務によって発症したといえるのであれば、基礎疾病が重いからといって労災を断念する必要は原則として必要ないということを念頭に置いて頂ければと思います。
「日本海庄や」の過労死訴訟 2審も社長らに賠償命令
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110525/trl11052521550011-n1.htm
飲食チェーン「日本海庄や」に勤務していた息子が死亡したのは過重労働が原因として、両親が経営会社「大庄」(東京)と平辰社長ら役員4人に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が25日、大阪高裁であった。坂本倫城裁判長は「過労の実情を放置し、何ら改善策を取らなかった」として、約7800万円の賠償を命じた1審京都地裁判決を支持、会社側の控訴を棄却した。
1審は過労死訴訟で初めて、大手企業トップの個人責任を認定。2審も同様に社長らが労働環境の改善を怠ったとして「悪意または重大な過失が認められる」と指摘した。
判決によると、吹上(ふきあげ)元康さんは平成19年4月に入社し大津市内の店舗に勤務。同年8月に急性心不全のため24歳で死亡した。死亡までの約4カ月間の時間外労働は月平均100時間超で、厚生労働省が定めた過労死認定基準(月80時間超)を上回った。
控訴審で会社側は、月100時間までの残業を認めた労使協定があり、「外食産業では一般的」と主張したが、坂本裁判長は「過大な残業が常態化し、協定でも補いきれなかったのが実情に近い」と退けた。
判決後に会見した吹上さんの母、隆子さん(56)は「上場企業なら法令は守られていると息子を送り出したのに、短い時間で旅立った」と悔やんだ。
大庄広報室の話「ご遺族に改めてお悔やみ申し上げる。判決文を検討し上告するか判断したい」
(古川弁護士の一言コメント)
いわゆる過労死であることが認められたことも大切ですが、特筆すべきは一部上場企業の代表者(社長)が個人責任を問われた事案として、極めて注目に値する事案と言えます。
会社の経営者は、労働者の心身の健康を損なわないような会社内システムを構築する義務を負っています。月100時間を超える労使協定が結ばれていたことなどからしても、本件で会社の代表者の個人責任が認定されたことで、今後、大企業の経営者が、労働者の心身の健康に十分配慮した労務管理を行うようになることが求められています。
半年前の過重労働でも労災と認定
http://www.nikkansports.com/general/news/f-gn-tp0-20110419-763544.html
埼玉県吉川市の男性(当時27)が00年9月にくも膜下出血で死亡したのは、約半年前に退社した会社での過重労働が原因として、両親が国の遺族補償給付の不支給処分取り消しを求めた訴訟の判決で、東京地裁(青野洋士裁判長)は19日までに、請求通り処分を取り消し労災と認めた。判決は18日付。
原告側弁護士件は「死亡の6カ月以上前の過重労働による労災を認める判決は初」としている。現在の労災認定基準によると、過労による脳や心疾患の労災認定は、発症前6カ月間に過重労働したことなどが要件となる。
裁判では6カ月より前の勤務状況が労災認定の対象となるかどうかが争われ、判決は「タイムカードなど明確な資料がある場合は評価の対象となる」とした。
判決などによると男性は1998年8月、都内の会社に入社。00年3月まで同社運営の複数のレンタルビデオ店で勤務し、同年9月に死亡した。月平均時間外労働時間は約60時間だった。
不支給処分をした足立労働基準監督署(東京)は「判決を検討して判断する」としている。(共同)
(古川弁護士の一言コメント)
過労死が労災として認定される際の目安となる時間外労働時間(直近1ヶ月100時間、6ヶ月平均80時間)は、そもそも疲労が蓄積して脳や心臓などの循環器にダメージを与えることを考慮して定められています。
そこで、発症前6ヶ月以前に過重労働があっても、その後疲労が回復しない状態が続いて(1ヶ月の時間外労働が45時間以上が一つの目安となります)、その後疾病を発症した場合には、業務起因性を認めて労災申請がなされるべきです。
そういう意味でも、報道を見る限り、上記判決は実態を反映した妥当なものだと考えます。
必ずしも労災認定基準に沿わないケースについても労災として認定されるケースもあります。当相談室ではこういったケースについてのご相談も受け付けていますので、お気軽にお問い合わせ下さい。
教頭死亡で公務災害認定 「いじめ対応でストレス」
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp201101120173.html
1999年に東京都世田谷区の区立中学校の男性教頭=当時(49)=が心筋梗塞で死亡したのは、生徒同士のいじめから生じたストレスが原因だとして、遺族が公務災害の認定を求めた訴訟で、東京地裁は17日、死亡との因果関係を認め、公務外とした地方公務員災害補償基金(東京)の処分を取り消した。
渡辺弘(わたなべ・ひろし)裁判長は、教頭の時間外勤務が心筋梗塞を発症するまでの半年間は月平均80時間を超え、発症2日前には、男子生徒複数が一人の男子生徒にビルから飛び降りるよう強要するいじめが起きたと認定。
その上で「当時は校長不在で、教頭は責任者としていじめの対応を強いられ、心理的負荷が極めて大きくなった。過重な公務に内在する危険が現実化した」と判断した。
判決によると、男性は98年4月から同校に教頭として赴任。99年6月に心筋梗塞で倒れ、約3カ月後に死亡した。遺族が2001年、地方公務員災害補償基金東京都支部に公務災害と認定するよう求めたが、05年の決定で「公務外」とされた。
(古川弁護士の一言コメント)
現在、学校現場では、学級崩壊やいじめ、モンスターペアレントといった問題が他数生じており、対応に追われる現場の教職員の先生方のストレスは非常に大きいものと思います。また、この被災者の方は管理職であったようですので、教育委員会等との対応など、中間管理職としてのストレスも大きかったものと思われます。
なお、教職員の方たちのメンタルやストレスの問題に取り組んでいらっしゃる精神科医の方のお話を聞く機会がありましたが、ストレスを大きく感じるかどうかは、労働時間等の「量」の問題もさりながらストレスの「質」にも着目すべきである、とおっしゃっておられるなど、非常に勉強になりました。
中国人実習生の過労死を初認定 1カ月の残業100時間超す
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp201101120173.html
外国人研修・技能実習制度で来日し、実習生として茨城県潮来市の金属加工会社フジ電化工業で働いていた中国人の〓暁東さん=当時(31)=が2008年に死亡した問題で、鹿嶋労働基準監督署は12日までに、長時間労働が原因の過労死として労災認定した。労基署によると、外国人実習生の過労死認定は国内初。
鹿嶋労基署によると、〓さんは05年に研修生として来日し、同社の金属部品メッキ処理工場に勤務。08年6月、心不全のため社宅で死亡した。亡くなる直前の1カ月の残業時間は100時間を超えていた。遺族が09年8月、労災申請した。
遺族側代理人の指宿昭一(いぶすき・しょういち)弁護士は「実習生になった2年目以降、残業は月間150時間に上り、休みは月に2日ほどだけだった。同様に働かされ過ぎて亡くなった外国人実習生は全国にいるが、多くが闇に葬り去られている。今回の件は氷山の一角で、過労死認定は遅すぎた」と話した。
問題をめぐって茨城県の麻生区検は昨年12月、労働基準法違反の罪でフジ電化工業の藤岡丈彦(ふじおか・たけひこ)社長(67)と法人としての会社を略式起訴。麻生簡裁がそれぞれ罰金50万円の略式命令を出し、確定した。
起訴状によると、2008年3~5月、〓さんら中国人実習生に違法な時間外労働をさせた上、割増賃金約45万円を支払わなかった。
【お断り】〓は「くさかんむり」に「將」を書きますが、JISコードにないため表示できません。
(古川弁護士の一言コメント)
外国人研修・技能制度の悪用で、外国人労働者の方たちが劣悪な労働条件で働いていることが最近問題となっています。
この事件は、その中でも特にひどいものが労災として明らかになったわけですが、このような悪質な事件については、労基署が厳しく指導・是正していく必要があると思います。
訓練後に死亡の陸自隊員、公務災害認定 防衛省
http://www.asahi.com/national/update/1227/TKY201012270384.html
陸上自衛隊松本駐屯地(長野県松本市)の1等陸曹(当時48)が駆け足訓練の直後に倒れて死亡したことをめぐり、遺族が公務災害の認定を求めたことについて、防衛省は27日までに、「月平均約80時間の時間外勤務をするなど過重な勤務が原因」として公務上災害と認める決定をした。陸自東部方面隊が公務災害と認めなかったため、国家公務員災害補償法に基づいて防衛省に不服申し立てをしていた。
代理人弁護士によると、砂原正弘1曹は2005年11月10日、静岡県御殿場市の陸自板妻駐屯地で、昇進に伴う教育訓練中に駆け足を終えた直後に倒れて意識不明になり、3日後に心室細動で死亡した。
防衛省災害補償審査委員会は、砂原さんが倒れる前の2カ月間に休日出勤や医務室当直、自習など平均月80時間の時間外勤務をしていたことを踏まえ、公務上災害と認定した。
(古川弁護士の一言コメント)
自衛隊員の方の公務災害において、時間外勤務月80時間というラインを重視した事案は珍しく、貴重な判断だと思います。
当相談室の波多野弁護士も弁護団に参加して勝ち取った仙台高裁平成22年10月28日判決の存在が、行政段階での認定を生んだのではないかと推察しています。
産科医の当直、時間外支払い命じた一審支持 大阪高裁
http://www.asahi.com/national/update/1116/OSK201011160074.html
産婦人科医の夜間や休日の当直勤務が労働基準法で定められた「時間外手当」の支給対象になるかが争われた訴訟で、大阪高裁の紙浦健二裁判長は16日、対象になると判断して奈良県に計約1540万円の支払いを命じた一審・奈良地裁判決を支持し、原告・被告双方の控訴を棄却した。
原告は奈良市の同県立奈良病院に勤める産婦人科医の男性2人。各地の病院の産婦人科医の多くも同じ問題を抱えているといい、代理人の藤本卓司弁護士は「高裁レベルで支給対象と認められたのは初めてで、産婦人科医療に影響を与える可能性がある。問題の背景には産婦人科医の絶対的な不足があり、数を増やすための国の対応が求められている」と話している。
高裁判決によると、2人は04~05年に210回と213回の当直をこなし、1人は計56時間連続して勤務したケースもあった。これに対し県は「当直は待機時間があり、勤務内容も軽い」として時間外手当の対象外と判断。当直1回につき2万円を支給した。
紙浦裁判長は、産婦人科医不足で県立奈良病院には県内外から救急患者が集中的に運ばれ、分娩(ぶんべん)件数の6割以上が当直時間帯だったと指摘。当直勤務について「通常業務そのもので、待機時間も病院側の指揮命令下にあった」と判断した。緊急時に備えて自宅待機する「宅直勤務」は時間外手当の支給対象と認めなかったが、「繁忙な業務実態からすると過重な負担で、適正な手当の支給などが考慮されるべきだ」と述べた。
武末文男・同県医療政策部長は判決後に県庁で記者会見し、「判決に従えば夜間や休日の診療が困難になる。国に労働環境改善と救急医療の両立を図れる体制作りを要請したい」と述べ、上告についても検討するとした。県側は2人の提訴後の07年6月以降、県立病院の医師が当直中に治療や手術をした場合、その時間に限って時間外手当を支給する制度を導入している。(平賀拓哉、赤木基宏)
(波多野弁護士の一言コメント)
産科医(他の医師も同じと思いますが)の方々は、「宿直」と言いながら、24時間即応する中で寝ずに対応しておられます。そういう現実の実態からすれば、当然の判決だと思います。
残業代の問題にしても、過労死・過労自殺(自死)の労災や民事請求の場面でも、大切なのは労働の実態です。形式だけ見て「だめだ」とあきらめずに、当相談室にご相談いただければ幸いです。
警官自殺(自死)「労災」認定 パワハラの有無は説明なし 福岡
http://www.asahi.com/job/news/SEB201011180058.html
福岡県警の警察官が2007年1月に飛び降り自殺(自死)したことについて、地方公務員災害補償基金県支部が、公務員の労災にあたる「公務災害」と認定していたことが、遺族や関係者への取材でわかった。遺族は過労に加え、職場でのパワーハラスメント(パワハラ)が原因だと訴えているが、同支部は遺族に認定理由を明かしていない。県警は「調査の結果、パワハラはなかった」としている。
同支部によると、警察官の自殺(自死)で公務災害が認められるのは珍しく、記録が残っている1989年以降、福岡県警では初めて。
死亡したのは、県警捜査4課から博多署中洲特捜隊に派遣されていた男性巡査(当時28)。同支部の認定によると、巡査は07年1月18日午前10時過ぎ、同署6階の資料室の窓から転落、出血性ショックで死亡した。同署は自殺(自死)と判断し発表した。
当時、現職警察官だった巡査の父親(60)や、同僚らによると、巡査は歓楽街の客引きや違法営業の取り締まりを担当。夜間のパトロールに加え、容疑者の取り調べが忙しく、連日、同署や近くのカプセルホテルに泊まっていたという。婚約者とやり取りした携帯電話のメール履歴から、亡くなる直前の10日間のうち4日間は家に帰らず、残り6日間は未明まで働いていたことがうかがえる。
同署の父親への説明や、同僚らによると、自殺(自死)した日は午前4時近くまで署で仕事をし、近くのカプセルホテルに宿泊。午前8時半に福岡地検に向かった。署に戻った後、取り調べの内容などについて上司2人から叱責(しっせき)を受けた直後に飛び降りたとみられる。
当時の上司は父親に対し、巡査にだけ毎日反省文を書かせていたことを認めたという。同僚は「反省文を出させて怒鳴りつけたり、容疑者の目の前でしかったりしていた。署員の間でも『いじめでは』という声が上がっていた」と話す。
父親は08年2月、同基金に公務災害の認定を請求。パワハラがあった疑いが濃厚だとする意見書も添えて出した。今年7月に認定されたが、認定書の「理由」は空欄で、パワハラの有無について説明はなかったという。
県警警務課によると、博多署が約20人に聞き取り調査をした結果、パワハラの事実は確認されなかった。県警が基金に出した意見書には、巡査が毎日ではないものの反省文を書かされていたこと、人間関係であつれきを感じていたと推察されることを盛り込んだという。長時間勤務については記録が残っていない部分もあり、確認が難しいという。
同課は基金の県支部窓口を兼ねているが「認定理由は我々も知らされておらず、説明のしようがない。遺族の請求に沿った形で認定され、よかった」としている。
県警監察官室は「違法行為ではないので、監察官室として調査はしなかった」という。
(古川弁護士の一言コメント)
公務災害認定がなされたことは良かったと思いますが、認定理由の説明が不十分なのは問題があります。
ご遺族にとって,労災が認定されることによって経済的な苦境から救われることに加えて、「なぜこのようなことになってしまったか」を知ることが、これからの再出発にとって重要であることが多いです。そういう意味では,労基署や地公災支部などは、できる限り詳しく認定理由を明らかにしていくべきだと思います。
なお、ご遺族側からのさまざまな手続きによって、認定理由などを知る方法があります。詳しくは当相談室にご相談いただければ幸いです。
過労死訴訟:自衛官妻が逆転勝訴 国に補償命令--仙台高裁・控訴審判決
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20101029k0000m040104000c.html
◇「勤務中死亡は公務災害」
陸上自衛隊反町分屯地(宮城県松島町)の自衛官が勤務中に死亡したのは過労が原因として、遺族が国に遺族補償年金などを求めた訴訟の控訴審判決で、仙台高裁は28日、請求を棄却した1審判決を取り消し、請求通り約2935万円の支払いを国に命じた。小磯武男裁判長は「国の公務災害の認定基準を超える超過勤務時間が認められる」として、公務上災害と認定した。
訴えていたのは1等陸曹、清野俊明さん(当時51歳)の妻晴美さん(58)=仙台市。
判決によると、清野さんは夜勤で通信業務などを担当。死亡前の1カ月間の超過勤務時間は123・5時間で、死亡10日前に米同時多発テロが起きてからは休日がなく、01年9月21日の夜勤中、脳内出血またはくも膜下出血で死亡した。小磯裁判長は判決でテロ後の勤務について、「心理的な動揺や精神的緊張を強いられたことが推認できる。公務の過重性を十分に補強する事情」と判断した。
1審仙台地裁判決(09年10月)は「高血圧、肥満、年齢などの危険因子によって引き起こされた可能性も否定できない」として、公務との因果関係を否定していた。晴美さんは判決後、「この日を待っていた」と話した。防衛省は「主張が裁判所の理解を得られなかった。関係機関と調整の上、適切に対処する」とのコメントを発表した。【須藤唯哉】
(波多野弁護士の一言コメント)
この事件は、私が控訴審段階から弁護団の一員として担当した事件です。
なお、一審段階では仙台の土井浩之弁護士が、控訴審からは土井弁護士を筆頭に仙台弁護団と波多野が担当しています。
10年近く前の自衛官の過労死事件で、ご遺族は苦しく長い戦いを余儀なくされました。ひどい不当判決であった一審判決後には頑張ってきたご遺族も一旦は諦めかけのですが、それまでの土井弁護士の献身的ながんばりと不当敗訴でもめげない励ましもあり、ご遺族は最後までたたかい抜かれました。
私も参加した控訴審段階では、年末年始に段ボール一箱分の記録と一審判決を読み込み、準備書面を一気に書きましたが、執筆中で、「この事件はご遺族が勝たないとおかしい」と確信しました。
また、この件では労働科学に関する専門家の助力と脳神経科の専門医師の助けも得ることができ、控訴審の審理においては被控訴人の国に対し、あらゆる面で圧倒していたと思います。仙台高裁の判決は事実認定の面でも理論的な面でもすばらしい判決と評価できます。
詳細は後日述べたいと思いますが、私の知る限り、自衛官の方の過労死が裁判で認定されたのは初めてではないかと思います。
過労自殺(自死):有料老人ホーム職員 損賠訴訟で認定 群馬
http://mainichi.jp/select/jiken/news/20101030k0000m040051000c.html
夫の過労自殺(自死)が前橋地裁で認定され、会見に臨む小林康子さん(中央)ら=前橋市大手町の群馬弁護士会館で2010年10月29日、沢田石洋史撮影
群馬県桐生市の有料老人ホーム運営会社「メディスコーポレーション」の事務職員だった小林克弘さん(当時43歳)が、うつ病を発症して自殺(自死)したのは過労が原因として、妻康子さん(50)ら遺族4人が慰謝料など計約1億1580万円を求めた訴訟で、前橋地裁(西口元裁判長)は29日、同社に約6590万円の支払いを命じた。西口裁判長は「過重な緊張と長時間労働を強いられて発症し自殺(自死)に及んだ」と述べた。
判決によると、小林さんは財務経理部長としてジャスダック上場を目指していた04年7月ごろ、うつ病を発症し、同年8月、前橋市内の路上に止めた車の中で練炭自殺(自死)した。発症前の半年間のうち5カ月は時間外労働が月100時間を超え、月約229時間に及ぶこともあった。同社は「弁護士と今後の対応を決める」としている。【鈴木敦子】
(波多野弁護士の一言コメント)
この事件は、私が労災段階から担当させていただきました。
その後、労災認定後の損害賠償請求訴訟においては、松丸弁護士と共同で担当させていただいています。
この判決は、100時間を超える時間外労働の負荷などを適正に評価して業務とうつ病との間の因果関係を肯定したうえで、会社がたとえうつ病に気付かなかったとしても、「そのような就労環境で稼動させている場合にはうつ病発症の危険を認識し得た」と認定し、(小林さんがうつ病になっていたことについて)気付かなかった」という会社側の弁解を否定したものです。
電通事件最高裁判決を適切に承継した、正当な判決であると評価しています。
「死ね」上司の叱責苦に自殺(自死)、労災認定
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20101019-OYT1T00181.htm
会社のビルから飛び降り自殺(自死)をしたのは上司の厳しい叱責(しっせき)などが原因だとして、出光タンカー(東京)の社員だった男性(当時43歳)の遺族が、労災を認めなかった国の処分を取り消すよう求めた訴訟の判決が18日、東京地裁であった。
渡辺弘裁判長は「叱責は精神障害を発症させるほど厳しいもので、自殺(自死)は業務が原因と認められる」と述べ、不認定処分を取り消した。
判決によると、男性は1997年7月から同社で経理を担当。99年頃には、上司の課長から「会社を辞めろ。辞表を出せ」「死ね」などと激しく叱責されるようになり、うつ病を発症し、同年7月に会社のビルの6階から飛び降り自殺(自死)した。
判決は上司の叱責について、〈1〉人が見ている前で公然と行った〈2〉言葉が厳しく感情的〈3〉他の管理職から注意されるほどだった――ことなどから、「企業における一般的な程度を超えていた」と判断した。
(古川弁護士の一言コメント)
労働者の人格を否定するような言動や、退職の強要は、厚生労働省が労災認定に用いる精神障害に関する業務上外の判断指針においても、心理的負荷が大きいものとして扱われています。
労働者は普段、会社・上司から指揮監督を受ける関係にあるため、このような言動があることが、強いストレスになることは当然です。その意味からも、このケースが労災として認められたのはとても大切なことだと考えます。
うつ「労災」認定迅速化へ…来夏までに指針改正
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20101014-OYT1T01422.htm
厚生労働省は、業務上のストレスが原因でうつ病などの精神疾患になった人の労災認定を迅速化するため、労災認定の「判断指針」を改正する方針を固めた。
現在、平均8・7か月(昨年度)かかっているが、申請者から「治療や職場復帰が遅れる」との声が出ていた。同省では6か月以内の認定を目指す。15日から始まる専門家の検討会で協議し、来夏までの改正を目指す。
現指針は、ストレスの原因となる職場での具体的な出来事について「対人関係のトラブル」「長時間労働」などと例示した一覧表を基に、ストレスの強度を3段階で評価。その上で、職場外のストレスなどと比較し、職場の出来事が精神疾患の有力な原因と判断されれば原則として労災認定される。
(波多野弁護士の一言コメント)
精神疾患の労災認定については、労働基準監督署の調査が長期化しがちです。
そのせいもあり、職場に勤めながら労災申請をなさっている方の中には、労災の判断がでるまでに休職期間が満了してしまい、解雇されるなどして紛争が生じている例が多いです。また、過労自殺(自死)などのケースでも、ご遺族の方の救済が遅れてしまい、生活が困窮している場合が多くあります。
そういった現状からすれば、申請から認定までの期間を短縮するという今回の動きは、朗報だと思います。
過労死遺族:衆院第2議員会館で集会
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20101014ddm041040106000c.html
労働者の疲労や心理的な負担について、国や使用者の責務を明確化する「過労死等防止基本法」の制定を目指し、過労死遺族で作る「全国過労死を考える家族の会」が13日、衆院第2議員会館で集会を開いた。
遺族は国会議員らに「(息子らの)死を無駄にしないで」と訴えた。家族の会では、過労死についての国や自治体、使用者や使用者団体の責任や義務を盛り込んだ法整備とともに、飲食店や小売店の営業時間の規制強化、過労死を出した企業名の公表の義務化などの立法も求めている。
(古川弁護士の一言コメント)
過労死や過労自殺(自死)が起こらないようにしていくためには、個々の企業の問題ではなく、法律などの規制をしっかり行っていく必要があると思います。
そういう意味では、ご家族を過労死や過労自殺(自死)でなくされたご遺族が、このような取り組みをなさることはとても意義のあることだと思います。
過労自殺(自死)訴訟が和解 九電工側が遺族に8000万円 福岡高裁
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/item/189928
九電工(福岡市)の男性社員=当時(30)=がうつ病になり自殺(自死)したのは、過酷な長時間勤務が原因だとして、男性の遺族が同社に損害賠償を求めた訴訟は9日、福岡高裁(古賀寛裁判長)で和解協議があり、九電工側が解決金約8千万円を支払うことなどで和解が成立した。
原告側の弁護士によると、他の和解条件は(1)男性の死亡は九電工の労働時間管理などに起因すると認める(2)九電工は同種事件が起きないよう今後最大限努力する-など。
昨年12月の福岡地裁判決によると、男性は2003年8月-04年7月、ビル新築工事の現場担当として従事。死亡前は月平均150時間の時間外勤務を強いられ、うつ病を発症、04年9月に自宅マンションから飛び降り自殺(自死)した。福岡中央労働基準監督署は07年4月、過労自殺(自死)と認定したが、同社が認めなかったため08年1月に提訴した。
一審判決は業務と自殺(自死)の因果関係を認め、九電工に6900万円の損害賠償などを命じ、同社が控訴していた。
九電工は「当社の主張も一部認められており、ご遺族のためにも裁判を早期に解決すべきと判断した。今後、同種事件の再発防止に向け取り組む」などとコメントした。
(古川弁護士の一言コメント)
月平均150時間という超長時間労働があったということで、ご本人のストレスは非常に大きかったものと思いますし、会社の時間管理に問題があったものと思われます。
企業側が自身の責任を認め再発防止をちかうという和解内容を勝ち取られたという点、非常に意義深いものだと思います。
労災認定:40代男性自殺(自死)を認定 /秋田
秋田市内の土木会社に勤務していた40代の男性の自殺(自死)を、秋田労働基準監督署が労働災害に認定したと9日、男性の妻の弁護士が明らかにした。
弁護士によると、男性は同社の現場事務所の責任者をしていたが、自殺(自死)直前には月150時間を超える時間外労働をしていた。体重減少や不眠からうつ病を発症していたと考えられるという。【小林洋子】
(古川弁護士の一言コメント)
記事からは必ずしも詳細がわかりませんが、自殺(自死)される直前の150時間という極めて長時間の時間外労働からすれば、被災者の心身の健康が損なわれてしまう可能性が高いことについて、会社は十分注意を払うべきだったと思います。
精神事案の労災認定基準は、基本的には「できごと」を中心に判断をすることになっていますが、このような長時間労働がなされていたような場合には、一定の考慮がなされているように思われます。
中国人技能実習生の過労死認定へ 鹿嶋労基署
http://www.47news.jp/CN/201007/CN2010070201000494.html
日本の技術を学ぶため外国人研修制度で来日し、技能実習生として金属加工会社フジ電化工業(茨城県潮来市)で働いていた中国人男性=当時(31)=が2008年に死亡したことについて、鹿嶋労働基準監督署は2日までに、違法な長時間労働による「過労死」と判断し、労災と認定する方針を固めた。
外国人研修生問題弁護士連絡会によると、外国人実習生を過労死として労災認定するのは初めて。
同労基署によると、男性は05年から同社で勤務。08年6月、心不全により社宅で死亡した。亡くなる直前の1カ月の残業時間は100時間を超えた。
同労基署は、長時間労働のほか残業代の不払いなどがあったとして、労働基準法違反の疑いで2日、同社と男性社長(66)を書類送検した。
(古川弁護士からの一言コメント)
外国人実習生を研修名目で長時間や過酷な労働に従事させ、人件費を浮かせようとする一部企業がいることは前から問題になっていましたが、今回この問題がクローズアップされています。
言うまでもありませんが、「研修」の名目を冠していても、その実態が労働であれば、労災の問題は発生します。このケースでは事業所が書類送検され、刑事事件に発展していますが、脱法行為を許さず、被害者の救済がなされることについては、
とても大切なことだと思います。
過労死判決 企業トップも指弾された
「過労死」とは読んで字のごとく、仕事上の過労が一因で、脳や心臓の疾患を発病して死に至ることである。ストレスや疲労の蓄積でうつ病になり、自ら命を絶つ「過労自殺(自死)」も少なくない。
働き過ぎが原因で死に至るなど、欧米の人たちには想像もつかないことなのだろう。過労死という言葉は、英語に翻訳されても、そのまま「KAROSHI」で通用する。裏を返せば、長時間労働を許す日本の労働環境が世界的にも特異であることの証しなのかもしれない。
だが、その理不尽ともいえる日本社会の労働実態が社会問題化するにつれて、過労死をめぐる訴訟でも、裁判所が雇用する会社側の責任を重視する傾向が定着しつつあることも事実である。
そうしたなか、今度は大手企業の社長ら経営陣の責任を厳しく指弾する判決が言い渡された。全国展開する飲食店チェーン店員=当時(24)=の過労死訴訟で、京都地裁が先月、店を経営する会社と社長ら役員に賠償を命じたのだ。
過労死弁護団全国連絡会議によると、過労死訴訟で大手企業トップの賠償責任が認められたのは初めてという。
判決によると、店員は2007年4月に入社した後、滋賀県内の店舗に勤務し、約4カ月後に自宅で就寝中に急性心不全で死亡した。この間の残業時間は月平均約112時間だった。
裁判長は判決理由で、同社の基本給が厚生労働省の過労業務認定基準である月80時間の時間外労働を前提にしている点を問題視し「労働時間についての配慮がまったく認められない」と指摘した。
そのうえで、社長らは、労働時間が過重にならないなど、従業員の生命や健康を損なわないような体制づくりの義務を怠ったとして「悪意または重大な過失がある」とまで言い切った。労働と死亡の因果関係についても「立ち仕事で肉体的負担も大きい」として、死因となった心疾患が業務に起因すると結論付けた。
過重労働に関しては、最高裁が2000年3月、広告代理店の若手社員の過労自殺(自死)をめぐり、会社の責任を認める初めての判断をした。それ以降、同じような判断を示す司法の流れが強まった。
巨額の賠償を認める判決もあり、元レストラン支配人が過労で倒れたケースで鹿児島地裁は今年2月、会社に約1億8700万円の賠償と未払い残業代約730万円の支払いを命じている。
とはいえ、これまでは金銭賠償など大半が会社への制裁だった。それだけに、企業トップの責任も認めた判決の意義は極めて大きい。今回、企業側は控訴したが、一審判決を「企業のトップが過労死防止のための対策を取ることを促した」と評価する声が上がっている。
過重労働の問題は、ほかの企業経営者にとっても決して人ごとではなかろう。労働時間管理のあり方に警鐘を鳴らす判決と受け止めて、各企業は真摯(しんし)に問題と向き合い、対策に取り組むべきだ。
(古川弁護士の一言コメント)
記事でも述べられているように、労働者が心身の健康を損なわないようにするために会社・使用者は労働者の安全に配慮しなければならない、というのは、電通大嶋事件最高裁判決で示された当然の法理です。
株式会社大庄(庄や)事件京都地裁判決で問題になったように、そもそも過労死ラインといわれる残業時間をしないと給料減額されるようなシステムを作っていた場合、経営者個人の責任が追及されるべきである、とするのは当然だと思います。
マスコミがこれらの問題を単なる個別の問題ではないとして取り上げていることは、とても大切だと思います。
労災認定:会社員自殺(自死)はパワハラが原因 島田労基署
建設会社の男性会社員が自殺(自死)したのは上司からのパワーハラスメント(パワハラ)が原因と、島田労働基準監督署(静岡県島田市)が労災認定していたことが4日、分かった。労災申請していた会社員の妻(30)の代理人の弁護士によると、パワハラによる労災認定は珍しいという。
自殺(自死)したのは、建設会社「大東建託」(東京都港区)藤枝支店で営業を担当していた谷坂聡太郎さん(当時42歳)。妻や弁護士によると、谷坂さんが担当して同社は05年3月、同県焼津市内のマンション建設の請負契約を施主と締結したが、基礎工事などの工事代金が予定より約3000万円超過。「お前が払わないなら関係者全員が解雇される」などと上司2人から谷坂さんが約360万円、2人が200万円ずつを施主に払うとの覚書にサインさせられた。谷坂さんは払えずにうつ病を発症、07年10月に自殺(自死)したという。
遺族側は「一社員が負うべきでない個人負担を強いられ自殺(自死)した。業務が原因なのは明らか」と労災認定を求めていた。
妻は別に同社を相手取り損害賠償を求め提訴。遺族側によると、同社は「支払いを強制しておらず、うつ病の原因も別にある」などと争っているという。
大東建託は労災認定について「コメントできない」と話している。【山田毅】
(古川弁護士の一言コメント)
会社で起こったトラブルのツケを個人に負わせようとする会社や上司からのプレッシャーは、その金額が大きければ大きいほど、労働者個人にとっては大きなストレスといえるでしょう。
たとえ労働者の個人的なミスで生じた会社の損害であっても、労働者の個人責任を問うのは厳しく制限されるべきであり、そのように判断した裁判例も多数あります。大切なのは、ミスをカバーする体制作りであり、労働者を糾弾するのではなく再発防止の方策を講じることこそが本筋でしょう。
うつ自殺(自死)一転、公務災害 異動で負担、残業短くても
http://www.47news.jp/CN/201005/CN2010052101000853.html
愛知県豊川市の職員堀照伸さん=当時(55)=が部署の異動直後にうつ状態になり自殺(自死)したのは「公務による労災」として妻しずえさん(62)が、「公務外」とした地方公務員災害補償基金の決定取り消しを求めた訴訟の控訴審判決で、名古屋高裁は21日、一審判決を取り消し、公務災害と認定した。
高田健一裁判長は、うつ病になり自殺(自死)したのは公務に起因と認定。「仕事が難しい児童課に異動直後から、早急な対策が必要な事案が複数あり、心理的負荷は相当だった」と述べた。残業時間は、異動直後で亡くなる前の月が32時間だったが、「時間が少なくても、心理的負担の大きさは変わらない」とした。
一審判決が否定した堀さんの部下に対する上司の高圧的な言動をパワーハラスメントと認定。「部下がパワハラを受けた場合、責任を感じるのは自然」として、堀さんの心理的負担を認めた。
心理的負担の程度は「労働者の立場や性格は多様で受け止め方に幅がある」と述べ、堀さんがうつ病になりやすい性格だったとして、因果関係を否定した一審判決の根拠の一つを退けた。
(波多野弁護士の一言コメント)
この判決の意義は二つあると思います。一つは、一般的に長時間労働がある事案の方が公務災害と認められやすいですが、本件のように直前で32時間と、残業時間が短い事案でも認められたこととです。
二つめは、被災者ご本人に対する高圧的な言動ではなく部下に対する言動(パワハラ)であっても、それが心理的負荷となることを、適正に認めたことです。
ここからもわかるように、労災(公務災害)の認定は、必ずしも杓子定規に決まり切っているわけではありません。あきらめずに、一度はこの分野に詳しい弁護士にご相談されることをおすすめします。
塩釜のトラック運転手自殺(自死):労災認定、不支給処分を取り消し /宮城
トラック運転手の夫が過労でうつ病になり自殺(自死)したとして、塩釜市の早坂百合江さん(45)が請求した労災補償について、宮城労働者災害補償保険審査官が、不支給とした09年4月の仙台労基署の処分を取り消し、労災認定していたことが15日、分かった。
早坂さんの弁護人らによると、夫勇希さん(当時41歳)は01年から大衡村の運送会社に勤務し、4トンユニック車で運送と搬出搬入の業務を担当していた。08年から富山県や静岡県など遠距離地が担当エリアに加わり業務が増加。勇希さんは同年9月、勤務先の駐車場で自殺(自死)しているのを発見された。死亡後、うつ病だったことが判明したという。
審査官は恒常的な長時間労働や担当エリアの拡大などが強い心理的負荷になったと判断。また、仙台労基署が平均60時間とした自殺(自死)前半年間の毎月の時間外労働を、100時間前後と認定し、拘束時間は毎月300時間を超えていたと認めた。【須藤唯哉】
(古川弁護士からの一言コメント)
①精神疾患の事案でも、長時間労働、特に月100時間以上の時間外労働時間があると認められれば、業務起因性を認められやすくなること、②労働基準監督署が認定した時間外労働時間も、審査請求で争う中で変更できる場合があること、などを示した良い事例だと思います。
労災認定訴訟:「自殺(自死)は労災」認定 NEC部長「重責でうつに」--東京地裁判決
NECの部長だった男性(当時52歳)がうつ病を発症して00年に自殺(自死)したのは過重労働が原因として、妻(54)=東京都稲城市=が、労働災害を否定し遺族補償年金の支給を認めなかった三田労働基準監督署の処分取り消しを求めた訴訟で、東京地裁は11日、労災と認め、処分取り消しを命じる判決を言い渡した。青野洋士裁判長は「自殺(自死)と業務に因果関係があった」と述べた。
判決によると、ソフトウエア開発関連部署の部長だった男性はうつ病を発症し、00年2月「万策尽きました。会社へ 責任をとります」との遺書を残し自殺(自死)した。
旧防衛庁調達実施本部の背任事件(98年)の影響で99年3月期、約2200億円の赤字を計上したNECは当時、収益の見込めない部署を整理する方針だった。男性の部署は検討対象とされ、判決は「責任者だった男性に、うつ病を発症するほど重い心理的負荷を与えた。(残業時間が月平均約100時間を超え)極度の長時間労働だった」と指摘した。
妻は会見で「無念を晴らせた。二度とないような施策を国や会社は考えてほしい」と語った。【銭場裕司】
(古川弁護士の一言コメント)
残業時間の多さもさりながら、リストラ対象の部署担当の管理職であったということでの心理的負荷は相当なものであったかと推察します。
ご遺族である奥様のコメントに「無念を晴らせた。」とあります。
過労死・過労自殺(自死)事件を取り組む中で実感するのは、この問題は、仕事で斃れた方とそのご家族の、名誉と尊厳を取り戻す営みであるということです。亡くなられた方は残念ながら戻っては来ませんが、その方の生きた証をたどることで、せめてそれらを回復するためのお手伝いをさせていただいていると考えています。
名ばかり管理職認定、残業代加算命じる 大阪地裁が判決
建築設備メーカー(東京)の「専任課長」と呼ばれるポスト時代に脳卒中で倒れ、過労で労災認定された大阪府の50代男性が「十分な裁量権が与えられない一方で残業代が出ない『名ばかり管理職』だった」として、支給済みの賃金だけをもとに労災給付額を決めた国の処分取り消しを求めた訴訟の判決が3日、大阪地裁であった。中村哲裁判長は、男性を「名ばかり管理職」と認め、残業代を加算しなかったのは違法と判断して処分を取り消した。
労働問題に詳しい原告代理人の松丸正弁護士によると、「名ばかり管理職」をめぐり、残業代相当額を加算して労災給付金を算定するよう事実上命じた判決は全国初。
判決によると、男性は、近畿地方の工場で機械設備工事の現場責任者を務めていた2005年、自宅でくも膜下出血を発症して寝たきりとなり、07年に地元の労働基準監督署から過労による労災と認定された。療養中、1日あたり約1万3千円の労災給付(休業補償など)を受給することも当時決まった。
判決は、発症当時、男性には技術部門の「専任課長」の肩書があったが、部下への人事権がなかった点や、発症2カ月前の月間労働時間が291時間に達していたことを指摘。男性は労働基準法で残業代支給が免除される「管理監督者」にあたらず、残業代の請求権があると判断した。(阪本輝昭)
(古川弁護士の一言コメント)
時間外労働があった場合には、残業代を支払うのが大原則で、例外は限定的にしか認められません。「管理監督者」にあたる、というのが数少ない例外の一つですが、「名ばかり管理職」の形式で、サービス残業が横行している残念な現状があります。
労災認定の場面では、給付基礎日額の問題として関係してきますが、労働基準監督署も、安易に「管理監督者」と認定して、給付基礎日額に時間外労働分を算入しない扱いをする場合があります。
この場合、認定に不服であれば申立によって日額を変更させることができます。
給付基礎日額の問題は、ご本人や残されたご家族のこれからの生活を支える大切な問題ですので、一度はご検討されることをおすすめします。
ただし、異議申立期間の制限があるのでご注意下さい。
佐川係長の自殺(自死)を労災認定 新潟
http://sankei.jp.msn.com/region/chubu/niigata/100225/ngt1002252146004-n1.htm
昨年5月、佐川急便新潟店(新潟市西区)の男性係長=当時(42)=が自殺(自死)した問題で、新潟労働基準監督署が過重労働が原因の労働災害だったと認定したことを、男性の遺族側弁護士が公表した。
弁護士によると、労基署は男性が月100~200時間超の残業をするなど過重労働で鬱病(うつびょう)を発症、自殺(自死)したと認定したという。
遺族側は長時間労働と上司によるパワーハラスメントが自殺(自死)の原因だったと訴えていたが、労基署は長時間勤務の実態から労災は明らかとしてパワハラの有無については言及しなかった。
遺族は今後、会社に対し、過重労働とパワハラによる自殺(自死)だったとして損害賠償を求めていくという。
(古川弁護士の一言コメント)
過労自殺(自死)や精神障害による労災認定は、ストレス度の高い「出来事」があったかどうかが大きな判断ポイントである、というのが判断指針です。
しかし、昨今、長時間勤務の実態がひどい場合には、そのこと自体を重く見て業務起因性を認め、労災認定を行なうケースが出ています。判断指針を形式的にあてはめるだけでないやり方は、好ましい方向だと思います。
高血圧悪化、過労死と認定 福岡
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/100217/trl1002171933008-n1.htm
大正製薬福岡支店(福岡市)に勤めていた夫=当時(42)=が2003年に死亡したのは過労死として、妻が福岡中央労働基準監督署の遺族補償不支給処分などの取り消しを求めた訴訟の判決で、福岡地裁は17日、業務で持病の高血圧が悪化して死亡したと判断し、請求を認めた。
判決理由で岩木宰裁判長は「恒常的に相当な時間外労働を行い、休日も出勤していた。長距離で多数回の車での出張は、移動距離が1日約778キロに達することもあり、精神的、身体的負荷は重かった」と指摘。高血圧を悪化させ、くも膜下出血とみられる症状で死亡したと認めた。
判決によると、鹿児島県を除く九州の営業担当だった男性は、03年6月に出張先の大分市のホテルで死亡。妻は労災認定を申請したが、翌年10月に退けられた。
(古川弁護士の一言コメント)
①高血圧などの基礎疾病があったとしても労災と認められる可能性が十分にあることや、
②長距離出張などを行っていた場合の精神的・身体的荷重の重さが考慮されること、
など、あきらめないでチャレンジしていただくことの大切さを示唆した判決だと思います。
過労で寝たきり、会社側に1億9500万円賠償命令
長時間の残業による過労がたたり寝たきりになったとして、鹿児島県鹿屋市の元レストラン店長松元洋人さん(35)と家族が、外食店を経営する康正産業(鹿児島市)に損害賠償を求めた訴訟の判決が16日、鹿児島地裁であった。山之内紀行裁判長は未払いの残業代や介護費として約1億9500万円の支払いを命じた。過労死弁護団全国連絡会議によると、全国の過労を巡る訴訟の中で最高額に匹敵する賠償額だという。
判決によると、松元さんは同市の和食レストランで店長として勤務し、1カ月の残業は200時間に上っていた。04年11月、自宅で心室細動を起こし低酸素脳症を発症し、意識不明の寝たきり状態になった。
康正産業は鹿児島県を中心に和食レストラン「ふぁみり庵」などを約50店舗を経営している。
(波多野弁護士からの一言コメント)
この事件は私が弁護団の一員として関わっており、本当に痛ましい事件です。現在係属中ですので詳しいコメントは控えさせていただきますが、事件が終結しましたら、具体的にご報告できると思います。
過労死損賠訴訟:1審判決変更し減額 業務との関係は認定--高裁 /福岡
くも膜下出血で死亡した男性タクシー運転手(当時56歳)の遺族が、勤務先の「篠栗タクシー」(篠栗町)に損害賠償を求めた訴訟の控訴審で、福岡高裁は27日、約3600万円の支払いを命じた福岡地裁判決(08年10月)を変更し、同社に約2700万円の支払いを命じた。遺族は会社が高血圧と知りながら男性に過重勤務を強いたのが原因として、慰謝料など約7900万円を求めていた。
森野俊彦裁判長は1審同様、業務と死亡の因果関係を認め、会社側に安全配慮義務違反があったと判断。そのうえで1審の認定額を減らした理由を「過重勤務に至った原因は、より多く収入を得たいという意思が大きく働いていたことは否めない」などと指摘した。
判決によると、男性は91年5月から同社で勤務。03年6月にくも膜下出血で倒れ、翌7月に死亡した。倒れるまで約半年間の時間外労働は1カ月平均80時間を超えていた。死亡は労災認定された。【和田武士】
(古川弁護士からの一言コメント)
企業の安全配慮義務違反を認めた点では評価できますが、過失相殺の減額理由については首をかしげざるを得ません。 裁判所は時として、人間に対して厳しすぎる態度を示すことがあると感じるのは私だけでしょうか。
過労死企業公開訴訟:「社会的批判を」原告が陳述
過労死や過労による病気で従業員が労災認定を受けた企業名の公開を国に求めた訴訟の第1回口頭弁論が26日、大阪地裁であった。飲食店店長だった夫(当時49歳)を過労自殺(自死)で亡くした原告の寺西笑子(えみこ)さん(61)=京都市=が「過労死や過労自殺(自死)をさせるのは企業犯罪。社会的批判にさらされるべきだ」と意見陳述した。国側は請求棄却を求めた。
寺西さんは陳述で書面を力強く読み、「労災申請と民事訴訟を通じて事実の解明に10年以上もかかった。しかし、悲しみは深まり、今も心の傷が癒えない」と心情を吐露。「過労死や過労自殺(自死)をさせた企業には何の社会的制裁もない。公開によって若い人の企業選びに役立つ」と企業名公開の意義を訴えた。
寺西さんは昨年3月、大阪労働局に情報公開請求したが、「個人の特定につながる」として開示されなかったため、不開示処分の取り消しを求めて提訴した。【日野行介】
(古川弁護士からの一言コメント)
過労死や過労自殺(自死)を起こした企業名が公表されれば、その企業は企業イメージが損なわれることになるでしょう。そのことによって、自社の従業員の働き方を省みる企業が出てくることは、過労死・過労自殺(自死)をなくす上で、非常に有意義だと思います。
自宅作業も業務と労災認定 心臓疾患死のマック店員
http://www.47news.jp/CN/201001/CN2010011801000733.html
00年11月に心臓疾患で死亡した日本マクドナルド(東京)の男性社員の遺族が、労災と認めなかった処分は不当として国に取り消しを求めた訴訟の判決で、東京地裁は18日、「発症は業務が原因」として、請求通り処分を取り消した。
渡辺弘裁判長は判決理由で、男性の時間外労働が発症前の1カ月間で少なくとも約79時間あったとしたほか、自宅でのパソコン作業なども業務に当たると判断。「強い業務の負荷に長期間さらされ、疲労の蓄積や過労が心臓の異常を引き起こした可能性が極めて高い」と指摘した。
判決によると、男性は大学卒業後の1999年4月に入社。00年11月、川崎市内の店舗に出勤した直後に倒れ、病院に運ばれたが急性心機能不全で死亡した。遺族は川崎南労働基準監督署などに労災を申請したが「業務起因性が明らかではない」と退けられていた。
(古川弁護士からの一言コメント)
自宅での作業も事情によっては業務にあたり、労働時間に算入されうるとした点について、評価できる判決と言えるでしょう。
(古川弁護士の一言コメント)
職場での性的嫌がらせ(セクシャルハラスメント)については、被害に遭われた女性労働者が声を上げにくく、エスカレートしていくことも少なくありません。
できる限りの早期の対策が必要ですし、仮にこれによって精神疾患を発症されてしまった場合には、速やかな救済が求められます。
当相談室でも、セクシャルハラスメントによる労災について、ご相談にのらせていただいています。